
近年、日本全国で深刻化しているのが「空き家問題」です。人口減少や高齢化により、住む人のいなくなった住宅が放置され、倒壊リスクや景観悪化、防犯上の問題を引き起こしています。東京都も例外ではなく、都心部から少し離れたエリアを中心に空き家の数は増加傾向にあります。
その中で注目されているのが東京都北区です。北区は23区の北端に位置し、赤羽や王子、田端といった交通利便性の高いエリアを抱えています。都心へのアクセスが良い一方で、古くからの住宅地も多く、空き家の発生率が比較的高い地域でもあります。
この記事では、北区における空き家の買取相場について、公示地価や実勢価格、実際の取引事例を交えながら徹底解説します。さらに、空き家を高く売るためのポイントや買取の流れ、税制上の特例についても紹介し、北区で空き家売却を検討している方にとって役立つ情報をまとめています。
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東京都北区の土地価格・買取相場
まずは北区全体の相場観を把握することが大切です。
順位 | 駅 | 地価平均 | 坪単価平均 | 変動率 | |
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1位 | 赤羽駅 | 139万9250円/m2 | 462万5619円/坪 | +11.75% | ![]() |
2位 | 駒込駅 | 124万8777円/m2 | 412万8191円/坪 | +12.76% | ![]() |
3位 | 赤羽岩淵駅 | 98万2428円/m2 | 324万7697円/坪 | +10.72% | ![]() |
4位 | 東十条駅 | 94万1500円/m2 | 311万2396円/坪 | +10.37% | ![]() |
5位 | 王子駅 | 93万1857円/m2 | 308万0519円/坪 | +10.38% | ![]() |
6位 | 板橋駅 | 89万1000円/m2 | 294万5454円/坪 | +10.36% | ![]() |
7位 | 西ケ原駅 | 88万0750円/m2 | 291万1570円/坪 | +10.84% | ![]() |
8位 | 田端駅 | 85万1125円/m2 | 281万3636円/坪 | +11.18% | ![]() |
9位 | 新板橋駅 | 84万8500円/m2 | 280万4958円/坪 | +11.40% | ![]() |
10位 | 西巣鴨駅 | 77万5600円/m2 | 256万3966円/坪 | +10.77% | ![]() |
11位 | 十条駅 | 73万6875円/m2 | 243万5950円/坪 | +9.74% | ![]() |
12位 | 赤土小学校前駅 | 69万8800円/m2 | 231万0082円/坪 | +10.07% | ![]() |
13位 | 志茂駅 | 59万6500円/m2 | 197万1900円/坪 | +8.99% | ![]() |
14位 | 上中里駅 | 58万6500円/m2 | 193万8842円/坪 | +8.60% | ![]() |
15位 | 尾久駅 | 57万3600円/m2 | 189万6198円/坪 | +8.42% | ![]() |
16位 | 本蓮沼駅 | 55万2500円/m2 | 182万6446円/坪 | +7.76% | ![]() |
17位 | 王子神谷駅 | 54万6750円/m2 | 180万7438円/坪 | +7.90% | ![]() |
18位 | 荒川車庫前駅 | 54万6333円/m2 | 180万6060円/坪 | +8.08% | ![]() |
19位 | 梶原駅 | 53万1666円/m2 | 175万7575円/坪 | +8.64% | ![]() |
20位 | 北赤羽駅 | 48万4000円/m2 | 159万9999円/坪 | +8.04% | ![]() |
21位 | 浮間舟渡駅 | 42万7000円/m2 | 141万1570円/坪 | +7.87% | ![]() |
2025年の公示地価によると、北区の平均地価は 1㎡あたり92万7,111円、坪換算で 約306万円 です。これは全国平均と比べると非常に高い水準であり、都心部に隣接する区としての立地価値が評価されています。
一方で、実際の売買に基づく「実勢価格」では、北区の土地取引の平均単価は 坪あたり259万円(㎡あたり78.3万円) となっています。前年比で約3.5%上昇しており、北区の土地需要が堅調に推移していることが分かります。
公示地価と実勢価格には差があるため、査定や売却を検討する際には「どちらの指標を基準にするか」を意識することが重要です。特に買取業者の提示価格は、実勢価格を基準とするケースが多いため、公示地価より低めになることも珍しくありません。
北区の土地は東京都平均よりも約23%高い水準で推移しており、これは再開発や交通アクセスの利便性、生活環境の整備が要因とされています。
北区における空き家取引の実例
相場をより具体的に把握するには、実際の取引事例を見るのが効果的です。以下は国土交通省「不動産情報ライブラリ」に掲載されている北区の取引事例です。
- 赤羽西:築1957年、木造住宅、土地55㎡、建物35㎡ → 520万円
- 豊島:築1994年、軽量鉄骨造、土地60㎡、建物75㎡ → 2,300万円
- 上十条:築2010年、木造住宅、土地115㎡、建物65㎡ → 6,100万円
- 田端新町:築1979年、鉄筋コンクリ造、土地155㎡、建物260㎡ → 1億3,000万円
- 西ケ原:築2024年、木造、土地290㎡、建物500㎡ → 3億3,000万円
- 赤羽:築1970年、鉄骨造、土地280㎡、建物490㎡ → 6億6,000万円
- 王子:築1987年、SRC造、土地390㎡、建物1,900㎡ → 10億円
これらは仲介を通じた取引事例ですが、空き家を業者に直接買取してもらう場合は、通常この価格の 6割〜8割程度 が目安となります。つまり、赤羽西の520万円の物件であれば、買取価格は約300万円〜400万円に落ち着く可能性が高いということです。
空き家買取の相場に影響する要因
同じ北区内でも、空き家の条件によって買取価格は大きく変動します。主な要因は以下の通りです。
- 立地条件
駅徒歩5分以内や赤羽駅・王子駅周辺の物件は高評価を得やすい一方、坂の多いエリアや駅から遠い物件は相場より下がりやすい傾向があります。 - 建物の状態
築年数が古くても管理が行き届いている場合は評価されますが、雨漏りやシロアリ被害があると大幅減額の対象です。 - 土地の形や接道状況
正方形に近い整形地で、幅の広い道路に接している土地は評価が高くなります。旗竿地や接道義務を満たしていない土地は安くなりやすいです。 - 法規制
用途地域や建蔽率・容積率の制限によって、将来的な建て替えの自由度が変わります。これも査定に直結します。
空き家買取のメリットと注意点
空き家を売却する方法には「仲介」と「買取」の2種類があります。その中で買取を選ぶメリットは以下の通りです。
- 最短で1ヶ月程度で売却が完了し、現金化できる
- 仲介手数料が不要
- 家具や残置物があってもそのまま売却可能
- 契約不適合責任が免責となるケースが多い
一方で、デメリットも存在します。
- 買取価格は市場価格の6~8割程度に留まる
- 建物の状態が悪い場合、さらに減額されやすい
スピードや手間を優先するか、価格を優先するかによって、どちらの方法を選ぶべきかが変わってきます。
北区の買取業者と売却の流れ
北区には、空き家買取を専門に扱う業者が複数存在します。例えば「訳あり不動産相談所」や「オネスト不動産」など、築古住宅や相続した空き家の取り扱いに強みを持つ会社があります。
一般的な買取の流れは次の通りです。
- 業者への相談・査定依頼
- 現地調査
- 買取価格の提示
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
仲介では買主が見つかるまでに時間がかかりますが、買取であれば業者が直接購入するため、売却までのスピードが格段に速いのが特徴です。
相続空き家に利用できる税制優遇
相続で取得した空き家を売却する場合、「3,000万円の特別控除」が使えるケースがあります。
要件は以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された住宅であること
- 譲渡対価が1億円以下であること
- 耐震リフォームを行うか、解体後に土地として売却すること
この制度を活用すれば、譲渡所得税を大幅に軽減できる可能性があります。相続した空き家を売却する際は必ず確認すべきポイントです。
まとめ
東京都北区は地価・実勢価格ともに高水準で、都心へのアクセスや再開発計画を背景に空き家市場も活発です。実際の取引事例を見ても数百万円から数億円まで幅広い価格帯が存在しており、立地や建物状態によって査定額は大きく変わります。
買取を選べばスピーディーに現金化できる一方で、価格は市場相場より低くなる点は理解しておく必要があります。複数の業者で査定を比較し、相続特例のような税制優遇を活用することで、より有利な売却を実現できるでしょう。
北区で空き家を所有している方は、早めに専門業者へ相談し、最適な売却方法を検討することをおすすめします。